日本ではあまり聞き慣れない「セリアック」という病気は、グルテンに対して体が免疫反応を起こしてしまう、自己免疫疾患の一つです。
グルテンというのは小麦・ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質のことで、グルテンフリーとはグルテンを除去した食事を指します。
小麦アレルギーやグルテン不耐性とも微妙に違う「セリアック病」
一体どんな病気なのかについて、まとめてみました。
セリアック病になる原因について
↑個人情報を隠した私の診断書↑
セリアック病の症状は様々です。
いくつもの症状を抱えて病院に行っても、それぞれの症状を結びつけられる医師が少ないため、セリアック病の診断がつくまでには何年もかかってしまう傾向があります。
また、中には自覚症状の無い人もいるなど、症状に個人差が激しいのも特徴の一つ。
病気の原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝的な要因があるといわれる一方、重度のストレスや腸内感染などが引き金になるともいわれています。
昔思われていたような子供特有の病気ではなく、大人も発症するリスクがあるため、他人事ではないこの病気。
現在アメリカ人の1% がセリアック病を持っていると言われていますが(日本人は0.05%)、 その中で実際に診断されている人は2割程度にとどまるそうです。
個人的には、今後日本でもセリアック病の患者が激増すると思っていますが、認知が進むには少なくとも5年はかかるのではないかと思っています。
セリアック病と診断されるための3つの検査方法
なかなか診断されるのが難しいセリアック病ですが、一般的には下記3つの検査の仕方があります。
- 血液検査
- 内視鏡での小腸生体検査
- 遺伝子検査
血液検査と小腸の生検をする場合は、グルテンを摂取している必要がありますが、遺伝子検査はグルテンフリーをすでに始めていても問題ありません。
血液検査だけでもかなりの確率で分かるものの、確実に診断するためには生体検査が必要との見解を、シカゴ大学病院のセリアック専門機関は伝えています。
セリアックの専門機関がある海外に比べて、日本では医師でもセリアック病を知らない場合がありますが、国内で検査ができる医療機関を探す場合は「セリアック抗体検査」または「セリアック抗体パネル検査」などで検索してみてください。
病院で検査するほどでも…という場合は、チェックシートを使った簡単なセルフテストというものもあります。
セリアック病のチェックシートと注意点
「もしかしたら自分はセリアック病かもしれない」と思っている人用に、自分で簡単に行えるチェックシートがあります。
下記は、コロンビア大学病院でセリアック病を研究しているグリーン博士の著書、「Celiac Disease A Hidden Epidemic」からの引用です。
本の根幹に触れる部分ではなく、冒頭で記載されている内容なので引用は問題ないとの認識ですが、もし指摘が入ったら内容を削除します。
セリアック団体の公式サイトに載っているチェックシートとは内容に違いがあるので、あくまでも参考程度にして、もしセリアックの疑いがあるようであれば医療機関を受診してくださいね。
項目1:症状
過去三ヶ月の間、少なくとも週に一度はあった症状に、チェックをつけてください
- __腹部膨満感
- __ガスが溜まる・腹痛
- __下痢
- __便秘
- __関節痛
- __手足のしびれ
- __かゆみを伴う皮膚障害
- __日常的に感じる原因不明の疲労
- __頭痛や偏頭痛
項目2:既往歴
過去に診断されたことのあるものにチェックをつけてください
- __過敏性大腸炎
- __アトピー・原因不明の接触皮膚炎
- __線維筋痛
- __慢性疲労症候群
- __非潰瘍性消化不良(神経性胃炎)
項目3:その他
下記に当てはまるものにチェックをつけてください
- __乳糖不耐性
- __骨粗鬆症・骨減少症
- __自己免疫疾患
- __甲状腺疾患
- __糖尿病(1型)
- __シューグレン症候群
- __慢性肝疾患
- __直近の家族に自己免疫疾患がある
- __末梢神経障害
- __非ホジキンリンパ腫
- __小腸がん
- __精神障害・うつ
- __貧血
- __不妊
- 項目1または項目2のどちらかで一つ以上当てはまるものがあり、項目3でも一つ以上当てはまる
- 全ての項目で1つ以上当てはまる
著者であるグリーン博士によると、上記に当てはまる場合はセリアック病の検査をしたほうがいいとのことです。
参考書籍:Celiac Disease: A Hidden Epidemic CELIAC DISEASE REVISED UPDATED [ Peter H. R. Green ]
セリアック病の人がグルテンを食べるとうつ病やパニック障害になる?
さて、様々な症状があるセリアック病は、うつ病やパニック障害とも関係があると言われています。
「グルテンフリーになれば精神疾患は治る」
「グルテンフリーと精神疾患は無関係」
ネット上では両方の声を目にしますが、実際のところはどうなのでしょうか?
アメリカの精神医学界が出版した「精神障害の診断と統計マニュアル」という書籍によると、下記がうつ病の診断基準になる症状の抜粋になります。
- 抑うつ気分
- 興味や喜びの喪失
- 自殺念慮・未遂
- 罪責感・無価値観
- 疲労感・気力の低下
- 集中力と記憶力の低下
- 不眠または睡眠過多
- 食欲不振・食欲増加(体重の増減)
- イライラ
上記を含む全症状のうち5つに該当すれば「うつ病」の疑いがあるとのことですが、実は5〜9の症状はセリアック患者の多くが感じる症状でもあります。
セリアック病がうつ病を併発させるのか、それとも全く無関係なのか。
因果関係や発病のメカニズムはまだわかっていませんが、セリアック病とうつ病の関係性において、下記の考え方が可能性としてあげられます。
セリアック病が原因の長年の痛みでうつ病になった
セリアック病は症状が多岐にわたるため、とても診断されにくい病気です。
以前読んだ記事によると、症状を感じてから実際に診断がつくまでに平均10年以上かかるとか。
実際に、私も10代の頃から色々な病院をたらい回しにされましたが、診断がついたのは20代後半でした。
原因不明の体調不良と継続する痛みが、うつ病の原因ではないかという説があります。
体内物質のバランスが崩れてうつ病になった
セリアック病というのは、グルテンが小腸を損傷することで、様々な症状が引き起こされる病気です。
小腸で栄養が正しく吸収されないために、セラトニンや、ビタミン、葉酸などの物質のバランスが体内で崩れたのではないかと言われています。
診断結果が原因でうつ病になった
セリアック病は現代医学では不治の病。
正しく付き合えばコントロールできる部分も大きいですが、治療法はなく対処法しかありません。
対処法である「グルテンフリー」の厳しい食事制限は一生続くため、その展望に絶望して、実際にうつになる人もいるとの報告もあるようです。
セリアック病の治療方法
研究は進められていますが、現状セリアックには治療薬というものが存在しません。
唯一出来る対処法が、食事からグルテンを排除した「グルテンフリー」の食事になります。
グルテンフリーの食生活を続けた結果、2週間で症状が改善した人もいれば、腸が回復するまで数年かかった人、もしくは完全には回復しない人もいるようです。
私は、セリアックと診断されてからグルテンフリーの食生活を何年も続けた結果、やっと長年悩まされていた毎日の腹痛から解放されました。
未だに普通の人より腸は弱いですが、お腹が痛くて毎日家にこもっていた昔を思えば、だいぶ改善されたと言えます。
セリアック病についてのまとめ
海外の記事や本を中心に情報を集めましたが、もしご自身に当てはまる症状があるようでしたら、一度専門医に診てもらうことをおすすめします。
日本ではまだまだ「セリアック」という病気は知られていませんが、これだけ欧米の食生活が浸透している現代、数年後にはきっと今よりも診断率は上がっていると思います。
診断がつけば改善に向けて次のステップが踏み出せるので、この記事がその一歩を踏み出すきっかになれば嬉しいです(^^)